全体としては、アラブはアラブで勝手にやるのだから放っておけという論旨であり、その理由として環境があまりに違うから中東に民主主義は根付かないのではという事。
 電気がない、血族第一主義があまりにも強くはびこっている事、人ではなく神が物事を決めるのだという宗教の考え方が強い事、そして自然と対決して生きている事がその根拠。ただ、もらえるものはもらっておくらしい。
 その後が急に論旨が分かりにくくなり、結局アメリカも日本もやってる事は卑怯で偽善だという事か。アメリカは責任逃れのために復興を支援し、日本はその場限りの平和論を唱えるだけだったと。


 アメリカが彼等にとってよそ者に過ぎないという考え方は賛成だ。フセインは憎しみの対象になるが、ブッシュはそうならないのではないか。それはイラク国民が、いや、人間は皆そうかもしれないが、もっとしたたかだからで利益をもたらしてくれるなら支持するし、そうでないなら支持はしない。利に敏いというか、非常に率直だからだろう。

 ただ、現実的なのは何もイラク国民だけではない。アメリカが民主主義を布教するという大義名分を信じ込んでいる、という前提がそもそもおかしくはないか。かと言って作者が考えているように石油の利権でもない。いや、だけでもない。
 防衛の為の先制攻撃論と、テログループが組織だってかくまわれる場所を潰す為、地政学的な利益と、石油の利権。これらの複合であるように思える。民主主義もそれ自体、嘘ではなかろうが。
 
 アラブの人が現実的だという論理を展開しておきながら、アメリカの現実的行為を非難するのは如何な物だろう。

 だからアメリカは、彼等のために善意で民主化してやろうというのではなく、自分たちの利益の為に民主化をしたいのだから、民主化せずに放っておけという考えには無理がある。それこそ戦争までしたのに、善意でやめるのか、という事だ。
 そもそも、上のような理由で民主化が出来ないのなら世の中に民主主義は成立していない。現在出来ていないからと言って、根源的に不可能だという考え方には賛成できない。

 だから、アメリカがしている事は偽善ですらなく、利己的行為なのであって、だからこそアメとムチを使い分けているのだ。仮に戦争の責任を逃れようとしている為にしているとしても、それを滑稽だと非難する事自体が滑稽ではないか。この点では塩野七生の方がずっと現実に即している。悪を行う時は速やかに行い、それを中和する為に手早く善を行う。どうせ悪なのだからと開き直る事は何の利もない。

 そう、これは開き直りの文章ではないか。どうせ、民主主義など根付かないのだから。どうせ、戦争なのだから。そういう開き直りこそが一番無責任だと思うのだが。

 最後に、日本が厳しい現実にも参加せず、個人的な命やまとまった金も出さなかったのも、これまた現実的だったからだ。変に善人である事を証明しようとしなかった事に、安心している。何も出さず、反感も買わずにアメリカに恩を売った一連の外交は成功ではないのか。誰も言わないが。今回日本は何も失わずに恩を売った。こういう現実的な外交は良いと思うのだがな。

――――――
 読んでない人には何がなんだか分かりませぬな。

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